魂の重さとは
ネタバレなし
あらすじ
余命一カ月で心臓のドナーを待つ患者ポール、夫と二人の娘を持つ幸せな妻クリスティーナ、異常に信仰心の強い男ジャック、出会うはずのなかった3人であったが……
21グラム……何の数字だか知っていますか?
20世紀、アメリカでダンカン・マクドゥーガルという医師がある実験を行いました。それは魂の重さを測るもの。彼は「人間は生きているとき死んだ後の体重の差が21グラムでありそれは魂の重量だ」と発表しました。もちろんこの実験はツッコミどころ満載なんですが、これ以来、「魂の重さは21グラム」という迷信が広まりました。
本作は魂の重さがテーマ。ショーン・ペン主演の映画では一番好きです。
3人のストーリーがバラバラに進み、おまけに時系列も滅茶苦茶なので物語の初めはかなり戸惑いましたが中盤からはグッと惹きつけられました。
濡れ場があるので苦手な人は注意。
ネタバレあり
ひとつ納得できないのがジャックは罪の意識をあれだけ感じていたのにメアリーに対して謝罪しに行かなかった点ですかね。
ポールがクリスティーナをストーカーのように追いかけていたとき、ひょっとしてこれは心臓に魂が宿るとかいうオカルトチックな話か?と嫌な予感がしたんですが、僕の杞憂でした。
もしそういった作品がお望みなら世にも奇妙な物語の「心臓の思い出」なんかがオススメ。まあ古い作品なので観る術がないかもしれませんが。
僕が好きなシーンはジャックの妻が必死に車を拭いている場面ですね。ここは本当に観ていて辛くなりました。人として最低な行為かもしれませんが、彼女を妻として母として考えると悲しい愛で溢れた行為に見えますね。
誰が死んだって魂の重さは21g(正確には3人死んでるので×3ですが)。でもそれを重いと嘆くか軽いと感じるかは人それぞれ。
クリスティーナはドラッグに溺れ、ジャックを殺したいほど憎みました。
ジャックは刑期を全うしたにも関わらず罪の意識に苛まれ自殺未遂まで行い、神に背くようになりました。
ポールは上記二人ほど深刻ではないですが、クリスティーナを守ろうという強い責任感を抱くことになりました。
上記三人はたかが二桁のグラム数のせいで人生が急変。
でもやっぱり所詮21g、軽いと思う人はたくさんいるのです。
クリスティーナの妹は姉がまだ沈んでいるにも関わらずバーでどんちゃん騒ぎ。
メアリーに至っては誰かの死によって夫の命が救われたのに気にも留めていません。
それから葬儀のときクリスティーナがこう言っていました、「母が死んだとき父はどうして以前のように喋れたんだろう」と。家族ですら魂の重さの感じ方は違うのです。
ちっぽけな21gすら穴埋めできない人生……誰にだって起こりうるでしょう。
本作の唯一の救いはメアリーが人工授精を希望していることとクリスティーナが妊娠していることです。天秤にかけることはできませんが、彼女たちの穴を新しい魂が少しは埋めてくれるかもしれません。