黒い鏡に映るもの
ネタバレなし
本作はテレビドラマにしては珍しくアンソロジー形式を取っているのが最大の特徴。つまり全ての話が異なる世界観、異なる時代、異なる地域、異なる時代、そして異なる登場人物を描いているというわけです。
こういうスタイルのいいところは第1話が面白くなかったら飛ばして第2話を観ても全く問題ないところですね(まあありがたいことに今のところ全話面白いですが)。もちろん一見関係のない話がどんどん交わっていくという展開でもないのでご安心を。もっと砕いて言うとタモリのポジションすらない「世にも奇妙な物語」といったところでしょうか。
それぞれの話の作者は別々ですがどの話も人間の嫌なところを描写しており鑑賞後はなんとも言えない気持ちにさせてくれますよ、オススメです。
ネタバレあり
1-1 国歌
ジャンルはSFだと聞いていたのにいきなり現代の話をぶっこんできたのには驚きましたよ。このエピソードに限っては明日現実で起こってもおかしくないですよね。いやー、それにしても強烈な話でした。タイトルは「国歌」ですがこれは当然「God Save the Queen」のことでしょう。やっぱりイギリス人にとって王族といのは非常に特別な存在なんだろうな。
ちょっと気になったのはこの世界では「ダウントン・アビー」が存在するようですがそれならブランソン役を演じたアレン・リーチが普通に出てるのっておかしくないですかね(笑)
さてあの誘拐犯の目的はなんだったのか、色々な解釈ができると思います。彼が単純に劇場型犯罪を好む精神異常者だったのかそれとも人間は残酷な興味を持つ生き物だということを証明したかったのか……
これはあくまで僕なりの考察ですが実は誘拐犯は愛国者であり尚且つキャロウ首相の熱烈な支持者だったのではないでしょうか。彼はキャロウが豚と交尾をすると信じていたからこそ放送開始の30分前に解放したのではないかと考えます。それに彼の支持率を下げたいのであれば替え玉を用意していた罰として本当にスザンヌ姫の指を切断するはずです。
豚と交尾をする首相なんて非常に哀れですが姫のためにそれだけの苦行をやってのけるのは英雄といっても過言ではないでしょう。そしてその目的のためとんでもない悪名を背負って死ぬあの誘拐犯の愛国心は末恐ろしいもんです。
1-2 1500万メリット
徹底的に管理された格差社会を描いたこのエピソード。階級意識が根強いイギリスらしいディストピアでした。労働者階級の大多数は肉体労働ないし単純労働に従事しそれすら満足にできない人間は清掃業に就くしかないんですね。そんな彼らが成り上がれる唯一の世界が芸能界……確かに労働者階級のアーティストって多いもんなあ。
衝撃的だったのはラストでビングが反体制を主張しつつも周りに流されて結局体制側についてしまったこと。体制側はビングの番組やガラスのアイテムは用意し労働者にガス抜きさせてるだけなんですよね。こういうやつってどこの国にもいそうだなあ。
1-3 人生の軌跡のすべて
最初はヤキモチやきの旦那がどんどんおかしくなっていくサイコホラーかと思っていたんですがラストで唖然としました。過去の記録をやたらと保存するのも考えものですね。
それからリアムと妻が虚ろな目で愛し合うシーンは滅茶苦茶ゾッとしましたよ……今思えばあの時リアムこそ若かりし頃の2人の映像を再生していましたが妻の方はジョナスとの一夜を再生していたのかもしれませんね。
初めはブラック・ミラーってなんぞやと思っていましたがタイトルが表示されたあとに画面が割れるオープニングから察するに液晶を表しているのであろうと確信しました。確かに3話とも「見ること」と「見られること」が大きなテーマになっているように思えます。
これからも液晶がどれだけ恐ろしいものかというメッセージを鮮烈に放つエピソードを期待してます。
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