再び土地は奪われる
ネタバレなし
あらすじ
テキサス州西部、ハワード兄弟はある目的のため入念な計画の元に銀行強盗を立て続けに2件行った。一方その頃、定年退職間近のレンジャーのマーカスとその相棒アルベルトがこの事件の捜査を任されることになるが……
本作はクライムアクションとしても十分面白いですが社会風刺映画としても非常によくできています。
アカデミー賞に多数ノミネートされただけありますね、オススメですよ。
ネタバレあり
まず邦題は正直あんまり好みじゃないかな。マーカス視点みたいなタイトルなのがどうもね……メインは明らかにトビーでしょうに。
ちなみに原題は「Hell or High Water」。「困難な状況」という意味だそうで個人的にはこっちのほうがしっくりきます。
さて、この映画のテーマはどうみても土地の略奪。
日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんがテキサス州の経済が石油に依存してしまっているくらい石油資源が豊富なんですよね。そりゃ土地の奪い合いが起きるのも無理ないですよ。終盤で銀行の支店長が嫌そうな顔で完済の手続きをしていたのが忘れられません(笑)
それからアルベルトが語っていた「インディアンから土地を奪ったやつらが今度は銀行から奪われる側に回った」という皮肉もなかなか強烈でした。いつだって歴史は繰り返されるんだなあ……
ところが日本も人ごとじゃありませんよね。有名企業が自社のネームバリューを餌に高齢の地主に対してアパートやマンションを経営しないかと誘って失敗したらその土地を安く買い叩くケースがたくさんありますもん。
みなさん、本作の街道沿いの看板に書かれているような銀行の甘い誘惑にはそそのかされないようにしましょうね。
そしてトビーがラストで言っていた「ずっと貧乏だった。俺の親もその親もだ。まるで病気さ。代々受け継がれる病気だよ。」という台詞が本当に印象的でした。平凡な人間が貧困から自力で抜け出すには良い教育を受けるくらいしか方法がないけれどそれすらもすごいお金がかかるからなあ。そんな負の連鎖を自分の代でなんとか終わらせようとする彼の親心には脱帽です。
しかしながら結果として大切な兄であるタナーの死はもちろん、無関係な銀行の損害、善良なアルベルトや警備員と銀行の客の死……この代償はあまりにも大きかったなあ。
全体的に満足できる内容でしたが現実的に考えたらトビーの計画は上手くいきすぎですね(笑)