ズルさを感じる
ネタバレなし
あらすじ
少年ブルーノは軍人の父親の仕事の都合で見知らぬ土地へ引っ越してきた。暇を持て余していた彼はある日、家から少し離れた農場のような場所を発見する。そこには縞模様のパジャマを着た少年がおり、彼と友情を育むが……
原作はジョン・ボインの同名小説ですがそっちは未見で本作を観賞しました。2人の少年の友情を描いていますが決して子供向けというわけではありません。重いテーマの割には95分と短めなのが驚きです。ただ僕はそこまでハマれませんでした、ホロコーストを扱っている作品はほとんど好きなんですけどね。
ちなみにドイツが舞台の作品にも関わらず登場人物は英語で話します。僕は吹き替えで観たんで何とも思いませんでしたがこういうのって嫌な人は嫌だろうなあ。
ネタバレあり
なかなか衝撃的な作品でしたね。嫌な予感こそしていましたが最もなってほしくない結果になってしまいました。ラストの静かなシャワー室は今でも脳裏に焼き付いています。
しかし僕はどうもこの映画のズルさが気になりました。もちろん大量虐殺はよくないことですし絶対にあってはならないということはわかっています。おそらく監督と原作者はそういったメッセージを本作に込めたんでしょう。
でも実際ブルーノはいないんですよ。この話が全て忠実ならともかくそうではないわけです。そもそもまともに考えればあんな簡単に地面を掘って収容所に侵入できるはずがありません。裏を返せば収容されていたユダヤ人も楽に脱出できたということですから。じゃあどういう風にすればあのオチに持ってこれるのかといくらか頭をめぐらせてみましたが何も思いつきませんでした。要するにどうみたってこんなこと起こるはずがないんです。第一仮にこんなことが起こったところで虐殺する側は「もうこんなことはやめよう」と考えるのでしょうか。「ブルーノが死んだのは設備が不十分だったからだ、もっと収容所を強化しよう」と捉える可能性だって十分ありますよね。
ホロコーストという設定を都合よく拝借して作り手が一生懸命考えた最も後味の悪い悲劇で戦争の悲惨さを訴えて一体何になるんでしょうか。そんなことをしなくても単純に写真や映像またはその時代を生き延びた人の実体験でも聞けば戦争の悲惨さって十分伝わると思うんですよ。別にフィクションで戦争の悲惨さを説くなと言いたいわけではありませんがもう少し事実との整合性に意識を向けていただきたいです。ただでさえデリケートな問題なんですから。
けれども本作はフィクションであると明示しているだけマシですね。中には絵空事を実話のように宣伝しているひどい作品もありますもの。